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  • 九州芸文館
  • Artist In Residence 2022
  • 第3の空間 (The Third Space)
  • キム・ジェウォン (Kim Jeawon)

九州芸文館Artist in Residence 2022 について

九州芸文館が2013年4月27日開館以来継続している国際交流事業Artist in Residence(アーティストインレジデンス)は、福岡県、韓国・釜山文化財団、筑後七国、ちくごJR芸術の郷事業団を中心とした多くの関係団体の担当者、選抜されたアーティスト、ボランティアの皆様、そして、ご来館者の皆様によって作り上げられました。

最初の8年間は福岡県、筑後市、釜山文化財団との間で九州芸文館の拠点性や定住促進を視野に入れたアーティストの国際交流事業として企画されました。多くのアーティストが九州芸文館の現代建築空間を活かし、調和した作品の発表が行われ、様々なジャンルのアーティストや美術関係者が交流しました。

6年目から指定管理者であるちくごJR芸術の郷事業団が運営を引き継ぐ形となりました。
ちくごJR芸術の郷事業団は、当館の開館当初より芸術文化を介した様々な事業を行ってきました。構成団体の一つであるNPO法人芸術の森デザイン会議は、芸術文化振興を旨とする法人であり、地域に根ざした会員構成と現役のアーティストや異業種会員のネットワークによって事業構築に寄与してきました。
また、日ごろ芸術制作活動をしている法人会員が企画運営担当であり、多くのネットワークの中から適切な情報を活用している事が当該事業を運営する根拠となっています。

これらの交流事業は産学連携や美術団体の協力、企画運営に携わる現役アーテイストの高い専門性と運営への深い理解あるスタッフ、及びボランティアが不可欠であり、これらを網羅する指定管理者によって達成されました。

九州芸文館は、今後交流を深めていく上で、相手国と同等のアートラボの確保、運営人材の育成、展示環境、財源の調達、廃施設活用とのマッチングなど、様々な課題を地域社会に提案しクリアしていく事が当該事業の価値を生み育てていくと考えています。

韓国・釜山文化財団のホンティーアートセンターは、毎年数人のアーティストの中から選出し、当施設に派遣し九州芸文館にて滞在し制作・発表を行っています。「A.I.R」のアーティストは世界各国から選抜されたアーティストです。使用施設は宿泊滞在・制作スタジオ・展示会場を備えた廃施設を改装した高度なアートラボとなっています。このような高度な施設との交流が九州芸文館を取り巻く地域環境はもとより、広域での廃施設再利用の機能性を高め、一つの社会問題の解決法としての提案、及び定着を促進しています。

最後に、今期の運営に際し、韓国・釜山文化財団の決断と行動に最大の敬意を表します。また、参加したアーティストの制作内容を九州芸文館ホームページ上でのアーカイブス展と記録集によって公開しました。制作活動の全容をご覧いただければ幸いです。

九州芸文館

Artist

キム・ジェウォンKim Jeawon

profile

【出身】

韓国群山市生まれ

【2010年】

B.F.A. 建国大学 現代美術学科卒業(韓国ソウル)

【2013年】

B.F.A. School of Visual Arts, Fine Arts(米国ニューヨーク)

【2015年】

M.F.A. School of Visual Arts, Fine Arts(米国ニューヨーク)

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個展

【2022】

「The Third Space:終わりの始まり」石堂美術館(韓国釜山)

「The Third Space:終わりの始まり」ホンティアートセンター(韓国釜山)

【2021】

「The Third Space: After Dark」Horangasinamu Artpolygon(韓国広州)

「溶ける土地、古人記憶」saga(韓国ソウル)

【2020】

「The Third Spaces」イ・ウンノ家(韓国洪城)

【2018】

「The Third Space 09」BGSW Creative Activity Center(ポーランドウストカ)

自主プロジェクト

【2022】

アートイン湯宿 / ゆじゅく茶屋 / 群馬

【2021】

《二つの庭園(下)》群山市新興洞58-2番地(韓国群山)

《二つの庭園(上)》ソウル市龍山区厚岩洞105-10番地(韓国ソウル)

【2020】

《The Third Spaces 10》イ・ウンノ家(韓国洪城)

《ある老夫婦の家プロジェクト》イ・ウンノロ98番ギル28(韓国洪城)

【2018】

《The Third Space 09》ジェムスタ・コシャリーナ(ポーランドスウフスク)

《通りすがる人よ思いいたせよ》(日本京都)

【2016】

《向島プロジェクト: Unfamiliarity of Intimacy》(日本東京)

【2015】

《The Third Space 08》400 Whitesboro Street (アメリカユティカ)

《The Third Space 07》350 Rutger Street(アメリカユティカ)

グループ展

【2022】

「関係の合成」Horangasinamu Art Polygon(韓国広州)

【2021】

「光・釜の物語」Horangasinamu Base Polygon(韓国広州)

「00MHz:振動する境界」蔚山中区文化の一帯(韓国蔚山)

【2019】

「ウリハラボジ」厚岩洞スタジオ(韓国ソウル)

【2018】

「ウリハラボジ」大谷中学校/ブックコーヒーソール(日本京都)

【2017】

「Your Hand, My Heart」ギャラリーシモン(韓国ソウル)

【2015】

「And Then It Starts to Sound Like the Beach」270 Broadway Rooftop Park(アメリカニューヨーク)

「SVA MFA Fine Arts Thesis Show」Gem Stores(アメリカニューヨーク)

【2014】

「Nearly Distant」SVA Flatiron Gallery(アメリカニューヨーク)Creative

「The Patarei Project」Patarei Prison(エストニアタリン)

「Carry More」韓電アートセンターギャラリー(韓国ソウル)

【2013】

「Add Me」Contemporary Art Space CASO(日本大阪)

【2012】

「Voyage of the Great Soul」全谷先史博物館(韓国全曲)

「工場美術祭」長項米穀倉庫(韓国舒川)

【2011】

「Project SPIN」Bogart Street(アメリカニューヨーク)

アーティスト・イン・レジデンス

【2022】

ホンティアートセンター(韓国釜山)

【2021】

Horangasinamu Creative Studio(韓国広州)

【2020】

イ・ウンノ家の創作スタジオ(韓国洪城)

【2018】

Baltic Gallery of Contemporary Art(ポーランドウストカ)

京都アートセンター (日本京都)

【2016】

東京ワンダーサイト (日本東京)

【2015】

Sculpture Space (アメリカユティカ)

【2013】

School of Visual Arts 20/20 Artists Honor(アメリカニューヨーク)

Exhibition

「第3の空間(The Third Space)」

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  • 九州芸文館×韓国釜山「Hongti Art Center」アーティスト・ イン・レジデンス 2022 成果展
  • 展示期間:2022年12月6日〜12月22日
  • 作品展示会場:九州芸文館 教室工房1・2

私(キム・ジェウォン)が生まれ育ったのは韓国群山(クンサン)市である。群山市は全羅北道北西部の都市として、日本家屋をはじめ、日本式寺院など日本と関連の深い近代文化遺産が多く残っている。日帝強占期当時、韓国の主要な港都市の一つであり、現在は港湾都市として発展した。日帝強占期当時、多くの日本人が居住していたこの小さな都市には、日本式家屋と当時日本が西洋の影響で作られた建築様式の建物が現在も数多く残っている。 現在の群山市の風景は日帝強占期当時に作られた建築物と1953年の韓国戦争後、経済成長期1960-80年代韓国式コンクリート建物が混ざっている。このような環境で育てられたのは現在、現代美術作家としての活動に少なくとも深い影響を与えてくれた。

私はある都市に一定期間、滞在しながらその都市が長い時間、度外視されてきた、歴史と物語を含んでいる建築と場所をリサーチし、その空間性をテーマにその場の象徴的なインスタレーション作品を制作している。釜山文化財団のホンティアートセンターと九州芸文館との国際交流事業の一環として開催される今回の展示では残された日本式家屋で育った、韓国人アーティストとして参加している。2018年から2022年まで京都、ソウル、群山そして釜山で制作した5点の作品を展示する予定である。

私自身が他の地域の人で観察者として、対象地域に滞在しながら、日本に残っている朝鮮半島人の軌跡と現在、韓国に残されている日本人の痕跡を探しそれを作品化している。その場所が持っている特殊な歴史と文化、物語を反映している。様々な場所の空間性と時間性が交差して重ね合う作品を通じて、韓国と日本の歴史は複雑にもつれている糸のように、建築物の有機性と生命力を語ろうとする。特殊な歴史的状況で建てられたこの建築は現在、どのような意味として、私たちに残されているかについて考察する。

文_キム・ジェウォン

Interview

ごあいさつ

九州芸文館は、福岡県南部に設置された県南唯一の文化施設であり、古来より文化芸術の活動が盛んな拠点に、地域の人々の待望の文化施設として開館し、地域に根差した活動とアジアとの交流を活動の中心と掲げ運営し、11年目になりました。

九州芸文館が担っている役割の中でも、国際交流をつかさどる事業は、令和3年度では、「第29回アジア国際美術展」が最も大きな事業でした。アジア13か国から現代美術家が作品を出品してくださいました。生憎コロナ禍のため、関連事業は開催できませんでしたが、多大な成果があった事業となりました。
令和絵4年度に於いては、福岡は古来より織物も盛んであり、繊維表現を行うITOBAのメンバーによる作品展示、ショーなどの企画を行い、伝統工芸と現代の技術と感性の融合による幅広いジャンルの染色織物の可能性と今後の発展へと寄与しました。そして郷土の生んだ偉大なる彫刻家、富松孝侑の寄託記念展が行われました。

九州芸文館の主たる事業として、例年続けてきた「アーティスト・イン・レジデンス」は、アーティストが国や文化の違いを越え、異国の地域社会に身を置き、異文化や歴史の中で、暮らしや人々との交流を通し、滞在制作を行います。市民は、アーティストの制作現場に立ち会い、地域で交流を深め、文化振興に参加しています。九州芸文館は芸術と人との交流を紡いでいるのです。

九州芸文館は「芸術文化交流施設」であり、多様な芸術文化の交流を、体験を通して情報発信することで「豊かな文化」の創出を目指す「拠点」です。 今年も、アーティスト・イン・レジデンスが行われる理由として、「持続的な交流」の中で持続可能な社会の循環を模索するものです。

アーティストと地域社会が出会い、相互に作用し合い制作される作品から、我々はあらゆるインスピレーションを受け、未来に活かされるアイディアを提案できるものと考えています。

九州芸文館 館長 津留 誠一