福岡県立美術館コレクション展 人間ドラマティック 柳瀬 正夢《波止場のI氏》

 

 

柳瀬 正夢やなせ まさむ
YANASE Masamu
明治33年-昭和20年(1900-1945)

波止場のI氏はとばのあいし
Mr. I at the Pier
大正11年(1922)
油彩・画布
oil on canvas

 

柳瀬 正夢

柳瀬は絵画や挿絵、装幀、漫画、舞台美術、写真、俳句など、多方面で活躍した作家です。明治33(1900)年に愛媛県松山市に生まれ、11歳のときに門司に移り住みます。小倉で見た洋画展をきっかけに画家を志した柳瀬は、大正3(1914)年に父の反対を押し切り上京、翌年には再興第2回院展に入選し早熟の天才画家として脚光を浴びます。その後は読売新聞社で挿絵や似顔絵の仕事を手がけたほか、プロレタリア美術への傾倒、治安維持法違反による逮捕などを経験します。そして昭和20(1945)年5月、空襲により波乱万丈の生涯を終えることになります。

 

《波止場のI 氏》

港にたたずむ男性とそれを包む逆光の色彩が、モザイク状の大きな点描の筆致で描かれています。自然光を透明感のある色彩に分割する印象派的な点描は、柳瀬の初期の油彩画から見られるもので、当時日本に流入していた西洋美術の情報を、貪欲に吸収していたことがうかがえます。柳瀬の先進性に対する関心は、大陸への玄関口として国際的な雰囲気が漂う門司の環境でこそ育まれていったものかもしれません。本作でモデルとなったI氏は柳瀬と親交のあった磯邊泰一という人物で、門司時代の画業における支援者の一人でした。

 

作品一覧へ次の作品