福岡県立美術館コレクション展 人間ドラマティック 中村 琢二《黄いろいうちは持つ婦人像》

 

 

中村 琢二なかむら たくじ
NAKAMURA Takuji
明治30年-昭和63年(1897-1988)

黄いろいうちは持つ婦人像きいろいうちわもつふじんぞう
Woman with a Yellow Fan
昭和18年(1943)
油彩・画布
oil on canvas

 

中村 琢二

中村琢二は少年期を宗像市で過ごしました。兄・中村研一の影響で絵を描き始め、福岡県立中学修猷館在学中には研一や児島善三郎らが創設した絵画同好会「パレット会」で洋画に親しみます。大学卒業後に肺病を患い療養していたころ、フランス留学から戻った兄の勧めにより本格的な絵画制作を開始します。昭和5(1930)年には二科展で初出品初入選を果たします。これは30歳を越えてからの画業の出発でした。美術学校で専門的な教育を受けていない琢二はしばしば、研一こそが職業画家であり、自分はアマチュアにすぎないと語っていました。

 

《黄いろいうちは持つ婦人像》

琢二が描く人物像は写実的でありながらも、堅苦しさはなく軽やかです。女性の膝先からひねった上体、そして視線の先に向かって優美なS字が画面内で構成されています。明朗な色彩を特徴とする琢二の作品の中では静謐な雰囲気が漂う本作ですが、透明感のある色面には琢二の天性の感覚が垣間見えます。安井曾太郎の指導を受けた琢二は、師の確かな写実力を受け継ぎながらも、温かみのある画風を確立していきました。本展覧会の出品作である研一の《サイゴンの夢》と比較してみると、重厚な描写を持ち味とする兄の画風との違いも見てとれます。

 

前の作品作品一覧へ次の作品