福岡県立美術館コレクション展 人間ドラマティック 髙島 野十郎《りんごを手にした自画像》

 

 

髙島 野十郎たかしま やじゅうろう
TAKASHIMA Yajuro
明治23年-昭和50年(1890-1975)

りんごを手にした自画像りんごをてにしたじがぞう
Self-portrait with an Apple
大正12年(1923)
油彩・画布
oil on canvas

 

髙島 野十郎

髙島は明治23(1890)年、現在の久留米市東合川で生まれます。85歳で生涯を閉じるまで、独身を貫き、徒党も組まず、絵を描くことに没頭し続けました。慈悲の思想を重ねた徹底した写実表現や自身を律した質素な生活からは仏教への傾倒ぶりがうかがえ、孤独に絵と向き合うさまはさながら修行僧を思わせます。この潔癖なまでのひたむきさは、学友や彼を取り巻く人々の心を打ち、作品の購入や知人への斡旋といった応援に 走らせます。無名な画家である髙島が絵を描くことを生活の中心に置くことができたのは、この応援が少なからずあったからでしょう。

 

《りんごを手にした自画像》

髙島が33歳の時に描いた自画像です。法衣をまとい、片手にりんごを持ち、じっと前を見据えるその表情は挑戦的でもあり、諦観の念が浮かんでいるようにも感じられます。大学卒業から7年、独学で画道に邁進する中で何か悟るものがあったのでしょうか。法衣は傾倒していた仏道を、りんごは業と定めた画道を表現していると推察できます。この二つは、彼の生涯からは切り離せないものであり、研究しながら切々と歩んだ道でもあります。まるで己に必要なのは画道と仏道のみと訴えているかのようです。

 

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